Connecting the Dots

アメリカの公衆衛生大学院留学に関するブログです。

費用効果分析:CEA(Cost-Effectiveness Analysis)について②

CEA、私がまだ奥深く理解していないだけなのかもしれないが、研究のゴールは複数の治療法やプログラムの効果とコストを数値化して比較するというもので、ICER(Incremental Cost-Effectiveness Ratio)を求めることが多い。

このICER、前回CEAについて①で書かせていただいた通り、CostとEffectivenessの比(正確には差同士の比)を計算する”だけ”なので、とてもシンプルだ。今考えると浅はかだったかもしれないが、「費用対効果分析って難しそうに感じていたけどなんてシンプルなんだ」という第一印象を持った。

  

今は…、勉強を始めたばかりではないにしてもそれほど時間が経っていないのでこのように感じるのかもしれないが、非常になんというか”難しく”感じている。正直な気持ち、本当にこれでいいのか…と感じることがしばしばある。

 

どうしてかというと、、

理由を書く前に、分母(Effectiveness)と分子(Cost)がそれぞれどういったものかもう少し書かせて下さい。

 

分母のEffectivenessにはQALY(Quality Adjusted Life Years:質調整生存年)といってQualityを考慮して(ざっくりとだが)どれくらい元気に長く生きられるようになったかというものを数値化することが多い。もちろん、Qualityではなくどれくらい生存年が増えたかとか、どれくらい合併症を減らすことができたかとか、その研究に応じて適切なEffectivenessを使用してよいのだが、現時点ではQALYを使用した研究が多い印象だ。

 

分子のCostには、基本的には対象とする疾患やその疾患に対する介入方法に関係ありそうなCostはできる限り考慮する。もちろん患者が窓口で支払う費用、保険者が支払う医療費もそうだが、病院への交通費(治療によっては病院を受診する頻度が減ったり増えたりする)、QOL(Quality of Life)が向上したことによる生産性への影響(治療が奏功すればそれだけ仕事ができる時間も長くなる)、そしてCaregiver(患者に付き添ったり、お世話をする人)への影響など、とにかく色々なCostを含める(ように推奨されている)。要するに、医療にとってだけでなく(Healthcare perspective)、社会全体にとってどれだけ効果があるか(Societal perspective)、Costが変わるのか、という部分まで計算に含める。